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【感想・ネタバレ】「サラリーマンは現代の奴隷制度」古代ローマから学ぶ奴隷の扱い方、そして奴隷から解放されるにはどうしたらいいのか? (マルクス シドニウス ファルクス、 ジェリー トナー著「奴隷のしつけ方」より)

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マルクス・シドニウス・ファルクス (著), ジェリー・トナー (著), 橘 明美(訳)の書籍「奴隷のしつけ方」を紹介します。

人のマネジメントはいつの時代も難しい

「サラリーマンは現代の奴隷制度」などと言われていますが、現代の奴隷制度で最もやっかいな問題のひとつがその”奴隷(=従業員)”たちのマネジメント。主人(上司、管理者)は”奴隷”たちの可能性を引き出しながら、いかに組織として成果を出し続けるかということが求められます。

人のマネジメントがやっかいなのは、古代ローマの時代でも同じでした。
古代ローマにはファミリアと呼ばれる父系制の家族制度が存在し、構成員に奴隷もいました。
この本は、古代ローマの奴隷の所有と管理に関する基本的な考え方、ファミリアを効率的に管理し繁栄させるためにどのように考え、振る舞ったらよいかということが書かれています。

指導力の発揮のしかた。
身分が下の者から、尊敬されるための心得。
奴隷の最適な扱い方、働かせ方。
「主人」とはどういうことかなどなど・・・

人間の本質なんて古代ローマ時代からそれほど変化していない

人間の本質なんて古代ローマ時代からそれほど変化していないようです。
この本は現代社会にも通じる「組織や社会のマネジメントの心得」が書かれています。

登場人物の「マルクス・シドニウス・ファルクス」は、著者のリトナー教授が生み出した架空の古代ローマ人。古代ローマ(共和制末期[前500年頃]~帝政初期[後400年頃])の当時の文献から奴隷に関する物を収集整理し、奴隷所有者はどう考え、どう行動していたかを想像し、その内容を「マルクス」の口から語らせています。

主人」を「上司、管理者」、「奴隷」を「従業員」と置き換えて読むと納得

古代ローマの奴隷制度を、現代のサラリーマンの制度と考え、この本にでてくる「主人」という言葉を「上司、管理者」で、「奴隷」という言葉を「従業員」で置き換えて読むと、なるほどと納得できることが多いです。ただ、一部首をかしげてしまう表現になるところもあるので、そこは考えて解釈しましょう。

本書の内容を、いくつか紹介してみます。

第1章 奴隷(従業員)の買い方

◆奴隷(従業員)は出費である。見栄で買うものではない。

第2章 奴隷(従業員)の活用方法

◆主人(上司)のふるまいが適正であれば、奴隷(従業員)も骨身を惜しまず働くし、長年にわたってあなたの支えとなるだろう。

◆若い奴隷(従業員)には教育と食事(=報酬)を与える。
・奴隷(従業員)の頭のなかは、食事(=報酬)、仕事、罰の三つしかない。(あと、たまには自由時間)。つまり仕事と飴と鞭を上手く利用し、奴隷(従業員)に効率よく働いてもらうよう管理する。

◆適材適所の役割分担をさせ、長期的な目標もたてさせる。
・10人程度のグループで働かせると監視もでき効率がよい。
・病気やケガで使えなくなかったからといって奴隷(従業員)を捨てることは法律違反。

◆農場管理人の奴隷(従業員)を選ぶときは慎重に。有能な管理能力のある奴隷(従業員)を選ぶこと。そうしないと問題が多発し、主人は身分相応の余暇を楽しむことはできない。たとえば、グループ作業を忠実にこなしてきた忠実で向上心のある30歳台がよい。

◆管理人(上司)の心得
・規則を維持する。
・領地内の揉め事を収める。
・よい働きには褒美を、失敗には罰を
・奴隷たちをえこひいきしない。
・健康を維持し、よく眠る。
・朝は誰よりも早く起き、夜は誰よりも遅く寝る。

人事制度や組織、マネジメントの心得についてですね。

第6章 なぜ拷問が必要か

◆古代ローマでは、奴隷(従業員)は身分が低く道徳的に弱い存在なので、真実を語るはずがないと考えられていた。そのため、奴隷(従業員)の拷問は真実にたどりつくために必要な手段であり、理にかなったもの、正義のためのものとみなされていた。ただ拷問すれば必ず真実を語ると思っていただけではない。証拠集めを優先し、拷問は最終手段と考えていた。

ん~、これは現代でいうとどんな状況にあてはめればいいんだろう?
ここでいう「拷問」は何に相当するのかなあ?
ちょっとわかりません。一旦スルーして次に行きましょう。

第7章 奴隷の楽しみ

◆12月17日に始まり何日も続く「サトゥルナリア祭」一種の熱狂的な無礼講。皆がうち解け合うことで、市民同士や奴隷(従業員)などの問題も解決してしまったりすることもある。日常のなかで蓄積された緊張がほぐれることが祭の意義なのでは。そはさて、ルールのない社会がどれほど奇妙で混沌としたものかを人々が体験することで、秩序や規範の大切さが強調されるという面もある。主人(上司)にとって大事なことはケジメをつけること。祭の終わった翌日には、また家内の雰囲気を引き締めること。

ハレ“と”ケ“の考えですかね。
メリハリが大事ってことですね。

解放奴隷は金銭的成功を目指しそして富豪になる

「サラリーマンは現代の奴隷制度」といっても、サラリーマンを卒業するかどうかは、自分の意思で自由に選択できます。
だから自分の意思では解放されることはないローマの”奴隷”とはちょっとちがうかもしれません。
ただ、古代ローマには「奴隷の解放」が制度としてあったそうです。
どんなときに解放されるかというと、

・遺言による解放。(最も一般的)
・主人が生きているときに、奴隷との信頼関係などの情緒的結び付きが深まったときなどに解放する。
・奴隷の解放には、奴隷が自ら自由を金品で買い取るという方法。

ローマの多くの奴隷が、奴隷状態は一時的なものだと考えていたそうです。

いずれにしても主人の考えに左右されますが。。。

奴隷から解放された人々は「解放奴隷」と呼ばれ、ローマ市民と同じ扱いを受けました。

解放奴隷には次のような傾向があったそうです。
・正式にローマ市民となった解放奴隷は、この社会でのしあがろうと必死になる。
・生来の「自由人」よりはるかに努力する。
・解放奴隷は公職に就けないから、金銭的成功を目指す。
・そして富豪になる。

古代ローマの解放奴隷は、現代のFIRE?

古代ローマの奴隷の解放には、奴隷が自ら自由を金品で買い取るという方法があるということから、
これは、現代のFI(Financial Independence;経済的自立)によるサラリーマン卒業(解放サラリーマン)に通じるモノがありように感じました。

現代の解放奴隷は、投資や副業で収益資産を築き「経済的自由」を得てサラリーマンを卒業した人でしょうかね。

私も早く奴隷(勤め人)から逃れられるよう、投資を頑張ろうと思います。

ちなみに、「社畜」ということばがありますが、社畜は自分の意思と良心を放棄し会社に飼い慣らされた動物というイメージがあります。一方、「奴隷」は多少自由意志が尊重され、少なくとも人間扱いされているという点で、「奴隷」は「社畜」よりましかなと思いました。


おまけ

この本は、現代の、奴隷制度(サラリーマン)における、主人(会社、上司、管理者)と奴隷(従業員、部下)の両方がそれぞれの立場で参考になるなと思いました。


「自由を手に入れる方法」を説いた、2000年前の古代ローマの哲学者エピクテトスも解放奴隷の一人でした。かれは、「物事の選択や決断を他人に任せず、自分の力がおよぶ事柄だけに意識を向ける」「心の自由が、経済的自由をもたらす」と説いています。解放奴隷だったからこそ本当の自由の意味が分かっていたのかもしれません。
エピクテトスの教えについては以前ブログで書いたのでリンクを張っておきます。興味ある方はよんでみてください。
【感想・ネタバレ】2000年経っても人間の本質は変わらない!(エピクテトス「自由を手に入れる方法」より)

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