投資のモチベーションを保つため、時々お金についてのマインドセットの本を読んでいる。
本屋で「マネーの公理 スイスの銀行家に学ぶ儲けのルール」(マックス・ギュンター (著), 林 康史 (翻訳), 石川 由美子 (翻訳))という本を見つけた。
「はじめに」の部分を開いてみるとそこには、
「人生は全てギャンブルである」、本書は「賭けて勝つための本」と書いてあった。
「人生」「ギャンブル」「賭けに」「勝つ」とストレートな言葉が並んでいる。
面白そうだし、もしかしたら投資について何か気づきが得られるかもと感じたので、読んでみることにした。
マネーの公理とは?
この本は、1985年に初版が発行された投資家Max Gunther(マックス・ギュンター)著「The Zurich Axioms」の翻訳本。
タイトルにある「マネーの公理」とは、投機で勝つためのお金のリスク管理の約束事のこと。
第二次世界大戦後、ウォール街のスイス人投機家の間で経験的に共有されてきたことから「チューリッヒの公理」と呼ばれている。彼らの経験は時間をかけて徐々に言葉に整理され、最終的に12の主要公理と16の副公理としてまとめられた。
著者が変心した父の教えが印象的だった
著者の父親もスイスのチューリッヒで生まれ育ち、後に銀行家としてウォール街で成功したスイス人投機家の一人だった。
著者が二十歳前後の頃に父から教えられ、投機家になることを決意した言葉が「はじめに」に書かれていた。印象的だったので載せておく。
父「学校は、おまえにとって一番大切なことをまったく教えていない。それは投機だ。いかにリスクを取って勝つか。投機の方法も知らずに米国で育っている少年なんて、まるでショベルを持たずに金鉱にいるようなものじゃないか」
父「給与だけで考えるな。給与では決して金持ちにはなれない。だから多くの人が給与をもらって貧しくなるのだ。自分のために、何か他のものを持たねばいけない。おまえに必要なのは投機だ、投機が必要なのだ」
なんか「金持ち父さんの教え」みたいだ。
投機で合理的にリスクを取って、賭けて勝つためのルールが「マネーの公理(チューリッヒの公理)」ってこと。
著者の父の言葉を聞いて、素直に「投機」してみようと思えたあなた。
「公理」に従って「投機」をすれば、もしかしたらお金持ちになれるかもしれない。
なぜなら、「この公理は多くの人々を金持ちにしてきた」そうだから。
投資と投機は本質的には同じ
一般的な投資の本には「投資」と「投機」は区別していることが多いが、この本では、次の言葉を引用して、投資と投機は本質的には同じだといっている。
そしてどちらも「投機」や「投機家」と表現している。
「すべての投資は投機である。唯一の違いは、ある人はそれを認め、ある人はそれを認めないことだ」(ジェラルド・M・ロブ:元ウォール街のトレーダー、1899年生まれ)
投機では「分散」と「長期」は”NG”
よく耳にする投資の常識として「分散投資」と「長期投資」という言葉がある。色々な投資本でも推奨されている考え方。でも「マネーの公理」はこの2つを否定している。
その「分散」と「長期」を否定している2つの公理について書いてみる。
一つは、「いつも意味のある勝負に出ること」(副公理Ⅰ)。
この公理は分散投資は利益と損失が相殺するのでNGとしている。
これを象徴するのが次の話、
投資の世界では「卵は一つのカゴに盛るな」(分散投資のすすめ)という格言があるが、この本では「分散投資の誘惑に負けないこと」(副公理Ⅱ)を是としている。
ウォール街では「すべての卵は1つの籠に入れろ、そして籠を見守れ」ということもあるそうだ。
もう一つは、
「長期投資を避けよ」(公理第12の副公理ⅩⅥ)である。
投機家のジェシー・リバモアの言葉を借りると、
「(長期)投資家は大いなるギャンブラーだ。彼らは賭けたまそれを持ち続けるので、うまくいかないと、すべてを失う可能性がある。賢明な投機家は、迅速に行動することによって、損失を最小限に抑えるものだ」ということ。
つまり、長期計画は将来を管理できるという危険な確信を引き起こすので、決して重きを置かないことが重要だといっている。
別の言い方をすると、
将来どうなるかは誰にもわからない。だから「アリ」のように長期計画を立てようとしてはいけない。その代わり「キリギリス」のようにフットワークを軽くしておくべきだそうだ。
今まで出会った投資の本の多くは、投資は「分散」と「長期」を推奨しているので、この2つを否定していることは少し意外だった。
ただ、よくよく考えてみるとこの本の目的は「投機」で「賭けて勝つ」にはどうするかということ。つまり短期で勝負するための手段として「長期」や「分散」は適当ではないということだと理解した。
これら「公理」といわれている言葉は「格言」と言い換えてもいいかもしれない。
12の公理について
本書で紹介している12の公理で、印象に残っている部分をメモしておく
1.リスク:心配は病気ではなく健康の証
「心配したくないなら、貧乏なままだ。もし、心配と貧乏の選択肢があるのなら、いつだって心配するほうを選ぶよ」(ジェシー・リバモア)
2.強欲:常に早すぎるほど早く利食え
「欲望を抑えることによって金持ちになるチャンスが増える」
「後悔の恐怖」(損切りした後に、株が高騰。痛みを伴う)から逃れよ。
・欲望→強欲=投機家の敵
3.希望:船が沈み始めたら祈るな。飛び込め
4.予測:人間の行動は予測できない
「未来がわかると言う人を信じてはいけない」
5.パターン:カオスは、それが整然と見え始めない限り危険ではない
つまり秩序が存在しないところに秩序を見付けるなということ。歴史家や因果関係を疑え。
6.機動力:根を下ろしてはいけない。それは動きを鈍らせる。
7.直感:直感は説明できるのであれば信頼できる。
ただし、希望や自分が起こってほしいことが起こるという直感に対しては懐疑的であれ。
8.宗教とオカルト:宇宙に関する神の計画には、あなたを金持ちにすることは含まれていないようだ。
つまり、「祈っても金持ちにはなれない」ってことですね。
9.楽観と悲観:楽観は最高を期待することを意味し、自信は最悪に対処する術を知っていることを意味する。楽観のみで行動してはならない。最悪にどう対処するかを知ること、それが自信。
10.コンセンサス:大多数の意見は無視しろ。それはおそらく間違っている。
11.執着:もし最初にうまくいかなけれはま、忘れろ
12.計画:長期計画は、将来を管理できるという危険な確信を引き起こす。決して重きを置かないことが重要だ。
これらの公理(=「格言」)は今後の投資(=投機)をするときに参考にしたいと思う。
格言をかいつまんで紹介したが、本当にお金持ちになりたいと思った人は、購入してじっくり読んでみるといいかもしれません。なぜなら、「この公理は多くの人々を金持ちにしてきた」そうだから。